焼き芋が甘くない?!シーズン初めから甘いお芋&これから甘くなるお芋まとめ
秋も深まるこの季節、焼き芋がますます美味しくなる季節でもあります。専門店では、9月から12月にかけて様々な品種が並びます。これらの品ぞろえには、じつは専門店ならではの工夫や視点が隠されていること、ご存じでしょうか?さつまいもはそれぞれ収穫時期や熟成によって甘さの立ち上がり方が異なるため、おいしい焼き芋を提供し続けるためには、ちょっとした知識やコツがあるのです。今回のブログでは、焼き芋ファン向けに、秋に楽しめる品種や甘さの特徴、さらに家庭でのおいしい焼き方まで、やさしく整理してご紹介します。

秋の焼き芋シーズンは“味のスタートラインが
さつまいもは収穫直後の状態では甘みが十分に出ていないことがあります。これは、収穫されたばかりの芋にはでんぷんが多く含まれており、糖に変わるプロセス(糖化)がまだ進んでいないためです。焼き芋専門店では、この糖化の進行具合や品種ごとの特徴を踏まえて、出荷時期や販売タイミングを調整しています。秋は、すぐ甘く食べられる芋と、これからさらに甘くなる芋が混在する時期なのです。

シーズン初め(9〜10月)に焼き芋屋の店頭でよく見かける品種
シルクスイート
滑らかな舌触りが特徴で、比較的早い段階から焼き芋として食べやすい品種です。初期の出荷でも甘さのバランスがよく、専門店でも9月から店頭に並ぶことが多いのが特徴です。新しいものはホクホクした粉質になりますが、11月以降の熟成により、なめらかでコクと奥行きのある甘さに変化します。

安納芋(安納紅・安納こがね)
「蜜が出る」で知られる安納芋は、早い段階でもしっとりと甘く、焼き芋としての満足感が高い品種です。天候によっては早期に品薄になることもありますが、熟成が進むとよりねっとりと濃厚な甘さが楽しめます。

地域ブランドの早熟タイプ
地域によっては、直売所や農家が早めに甘くなる専用品種を出荷することもあります。専門店では、この“旬の走り”を店頭に並べることがあり、早い時期から甘さを楽しめる芋として重宝されています。
11〜12月に本領発揮!これから甘くなる品種
紅はるか(べにはるか)
糖度が高く、寒さや熟成によって甘さがさらに増す品種です。秋の段階では個体差がありますが、産地で適切に追熟されたものは、12月以降に黒糖のような濃い甘さが安定して楽しめます。
紅あずま
ほくほく感が特徴の紅あずまは、秋口はやや控えめな甘さですが、11月以降の低温で香りが濃くなります。焼き芋らしいほくほく食感を楽しみたい方に適した品種です。
鳴門金時
上品な甘さと香りが特徴で、秋は軽やかな甘さですが、12月の寒さにより栗のような深い甘さが増していきます。ほくほく系の焼き芋として、シーズン後半に人気の品種です。
紫芋系
粉質寄りで甘さの伸びが遅めですが、熟成によって香りと甘みが増す品種です。秋の段階ではあっさりしていますが、スイーツや料理用としても楽しめます。
専門店で昨年もの(貯蔵芋)が出る理由
専門店では、あえて前年に収穫された芋を秋に販売することがあります。さつまいもは時間をかけて熟成させると甘さが増す性質があり、長期貯蔵によって味が安定した状態で販売可能です。この“昨年もの”は、糖度が高く味のブレが少ないため、初秋に新芋が十分な甘さを出せない時期に、もっとも甘いおいもとして店頭に並べられます。
家庭で楽しむ場合も、「新芋は甘さがまだ出ていない可能性がある」「貯蔵芋は安定して甘い」と覚えておくと、スーパーで買ったおいもがあまくない!というときの対処がわかるようになります。
秋に自宅で焼き芋を楽しむなら──当たりを引く3つのポイント

秋にスーパーで買ったさつまいもをそのまま焼くと、「全然甘くない!」ということが起こりがちです。当店でも、ながしの焼き芋屋で焼き芋を買ったらまずかった!とか、スーパーで買ったお芋を焼いたらまずい!と言って、買いにいらっしゃるお客様、よくいらっしゃいます。おうちでおいしい焼き芋を楽しむためには、収穫後の状態や品種を意識し、少し手をかけることが重要です。
1. 品種を選ぶ
秋に甘さを楽しみたい場合は、早めに甘さが出やすい品種を選びましょう。おすすめは以下の通りです:
- シルクスイート:初期からしっとり甘く、焼き芋に適している。
- 北海道産さつまいも:寒暖差が大きく、甘みが乗りやすい。
- あまはづき(入手可能であれば):収穫直後でも甘みが出やすい新品種。
紅はるかや紅あずまは、秋の段階ではまだ甘さが安定していない場合があるため、家庭で焼く場合は少し熟成させてからの方がよいでしょう。
2. 買ってすぐに焼かず、寝かせる
甘さを引き出すために、購入後は少し置いて熟成させることをおすすめします。
- 新聞紙で1本ずつ包む
- 直射日光を避けたキッチンの隅などで1週間ほど置く
- 通気性がある場所で保管することがポイント
このひと手間で、買ったばかりでは甘くなかった芋も、しっとり甘くなり、焼き上がりの味わいが格段に変わります。
3. 見た目で当たりを見極める
秋は収穫直後の芋の状態がばらつくため、見た目で選ぶのも大切です。
- ずっしり重いもの:中身が詰まっており、焼き上がりのしっとり感が期待できる
- ほどよい中サイズ:熱が通りやすく、甘みが出やすい
- 皮にハリがあり、傷やしわが少ないもの:乾燥や劣化が少なく安定した焼き上がりになる
この3つを意識すると、家庭でも専門店に近い味わいの焼き芋を楽しめます。
まとめ
秋の焼き芋シーズンは、収穫直後の新芋と、追熟や貯蔵によって甘みが増した芋が入り混じる時期です。専門店では、甘い芋とこれから甘くなる芋を見極めて販売していますが、家庭でも少しポイントを押さえれば、同じようにおいしい焼き芋を楽しむことができます。
- シーズン初めに甘さが出やすい品種(シルクスイート、安納芋、あまはづきなど)を選ぶ
- 買ってすぐ焼かず、新聞紙で包んで1週間ほど寝かせる
- 見た目や重さをチェックして当たりを選ぶ
この3ステップで、秋の家庭焼き芋は格段においしくできますよ!季節の移ろいを感じながら、じっくり甘さを育てる時間も、焼き芋の楽しみのひとつ。
もちろん、専門店でおいしいお芋を買って、焼き上がりのイメージを知るのも、ゴール設定という点でも非常に有効です。いもぞうのお芋もぜひお試しください。
